ドキュメンタリーの製作過程について(前編)

Posted by eba_ko | Posted in 製作日誌 | Posted on 01-10-2010

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こんばんは。

近頃は関西クィア映画祭、ドキュメンタリー・ドリーム・ショー 山形in東京2010に参加するなどバタバタしていたため、更新が滞っていました。体が一つしかないので、あれもこれもとこなすことが大変なのですが、共に撮影していた浦上も当事者から少し離れた立場で記事を書いてくれるそうなので、楽しみにしています。企画に撮影、構成と共に多くのことを相談しながら進めてきましたが、やはり彼がいなければここまですることは到底できなかったと思います。その話は後日改めるとして、今回は少しドキュメンタリー製作の一年半を振り返りたいと思います。

まず、blogの二つ目の記事にあたる企画概要を書いたのが2009年3月頃。浦上に映画監督の鎌仲ひとみさんさんを紹介してもらい、事情を説明して企画書を読んで頂きました。鎌仲さんは「女として生活したいなら、ただそうすればいいだけの話じゃない?でも、動機はしっかり書けているから撮ってみればいいわよ。」と仰いました。確かに、放射性廃棄物と比べるとジェンダーは社会の問題としての側面より個人の話に陥りやすいと思いますが、私は今まで、トランス過程の中で不登校を経験し、行き場を求めてショーパブやヘルスを覗いてきました。バッシングされ居場所を求めるトランスジェンダーの問題は個人の努力ではどうにもならない社会問題だと実感したことで、このテーマで撮ることを決心しました。撮るといっても、私は映画監督ではないですし、大学で映像製作を習ったといえ素人に毛が生えたようなものです。撮影前のリサーチもポストプロダクションの重要性も分からないので、手探りの中、同じ当事者を探しアポイントメントを取りました。それが、女装ニューハーフプロパガンダを主催していたモカちゃんです。モカちゃんとは以前からネットを通じてやりとりをしていたので、こちらの相談にはすぐ応じてくれました。

2009年3月28日からイベントを撮影してからというもの、モカちゃんから了承が得られればどこでも DVカメラを担いで同行しました。体力に自信がないので三脚こそありませんが、最低限の装備で手持ち撮影を行っていたので、さしずめカメラを持った女です。場所は新宿二丁目と歌舞伎町が主だったので、BARの中や路上で撮影していると、話しかけられることも少なくありませんでした。浦上と協力しながら機材を片付け、適当なことを取り繕って退散した覚えもあります。撮影を進めていけばまたそこで新しい出会いもあり、その都度企画書を渡し、了承を得ながら撮影への協力を仰ぎました。そうしてモカちゃんの他に、8月からあやさん、しゅがーさんが加わりました。ドキュメンタリーは劇映画と異なり確固としたシナリオがないため、私が当初に考えていたような先入観、悪く言えば偏見は悉く裏切られていきました。それもいい意味で、予想とは違う方向へ撮影は進展していきました。モカちゃんのイベントに遊びにくる男性も女性も、MTF(male to femaleの略)もFTM(female to maleの略)も本当に実生活は一概にはいえず、そのセクシュアリティ、ジェンダーの「括り」をまた「枠」をそれぞれの仕方で打ち破っていました。それは驚きの連続でもありました。

最初の四ヶ月こそ、模索しながら撮影を進めていましたが、撮影対象を定め始めた頃から少しずつ、カメラを構えながら会話をすることもできるようになりました。それまではカメラの重さを支えることで精一杯で、帰宅後テープを見直した時に何を喋っているのか、辻褄さえあっていないこともしょっちゅうありました。撮ったテープを見直すことで、指向性のマイクや広角レンズの使用を検討するようになったのもこの頃になります。(ただ重くなることは難点でした。)被写体の方々とはあまり干渉せず、日常を記録していく。そんなことを考えて始めた撮影でしたが、結果として私はとても深く関わっていたのだと思います。人と人との間を駆け巡りながら、カメラと共に旅をする、そんな日々でした。

Comments (2)

監督自身も元は男性で今は女性として生きている方なのですか?「私も今まで、トランス過程の中での不登校の経験から、ショーパブやヘルスの内実を覗いていたため」とありますが、不登校とショーパブやヘルスの内実を覗いていたというのが、いまいち繋がりがわからないのですが、良かったら教えて下さい。

iiiさん
コメントありがとうございます。「私も今まで、トランス過程の中での不登校の経験から、ショーパブやヘルスの内実を覗いていたため」は、ご指摘をうけて「私は今まで、トランス過程の中で不登校を経験し、行き場を求めてショーパブやヘルスを覗いてきました。バッシングされ居場所を求めるトランスジェンダーの問題は個人の努力ではどうにもならない社会問題だと実感したことで、このテーマで撮ることを決心しました。」に書き換えました。
日本語が下手くそですみません。

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