私は性別違和で悩む多くの人と同様に、幼少期から自身の性別に、また二分された性役割に対し違和感をもっていました。生活上不便に感じ始めたのは第二次性徴の始まる中学三年の頃、身体的変化の混乱と精神面の苦悩から、男子校を中退しました。高校の期にあたる三年間は受験勉強の傍ら、大学病院やメンタルクリニックで精神療法を受けてきました。十七歳から医師の診断と関係なく個人で女性ホルモン剤を飲み始め、以後現在まで医師の観察下でホルモン療法を行っています。
セクシャルマイノリティとして分けられる人々は、性に関する何らかのことで常に問題を抱えているのではないでしょうか。それは容姿や恋愛、家族や友人付き合い等、より一般的な悩みから、各種カード等の公的手続き、戸籍、就職、教育、医療まで様々です。例えばトランスジェンダーの場合、性別を移行する段階ではコミュニティや同境遇者、医療機関の支えがないと、アイデンティティの帰属意識から周囲の受容まで常に困難が付き纏うでしょう。現状のガイドラインではホルモン治療が第二次性徴を過ぎた二十歳前後と定められているため、保険の利かない高額な手術費を稼ぐために、若いうちからパブやヘルス等の仕事に従事する人も少なくないと思います。トランスジェンダーにとっての医療ガイドラインは当事者のためにではなく、受け入れ側の社会のためにさえあると感じます。
私は様々な同境遇者に会って話をするうち、当事者によるトランスジェンダー映画が必要だと感じました。自身の体験を被写体に投影することは恣意的な映像にもなりかねないと思いましたが、雑多なメディアで一括りにされがちな個人レベルの現状を取材できるのではないかと考えました。私はこの映画を作ることにより、メディアの排出し続けるキッチュな「セクシャルマイノリティ」像に一石を投じ、より多様な人々が生き易い社会に、また次の運動へと繋げていきたいと思っています。
偶然辿り着いたサイトがあなたのものでした。正直、私はあなたのことは何も知らず、大して深い話もせず、制作のストレスもあり、結局何も本当のことを話し合うことのないままの関係で終わりました。でも、うすうす気が付いてました。この書き込みを見てやっぱりそうだったのか、と思いました。人は別の種類の痛みを持ち、その解消法や取り組み方も様々です。あなたの知らないこともある。考え方やアプローチの違う人を「間違っている」攻撃するのは止めて下さい。あなたも私も、これからもかわっていくと思います。あなたはあなたの道を頑張って下さい。