隠されたコード

Posted by eba_ko | Posted in エッセイ | Posted on 30-11-2010

0

更新頻度がやたら少なくて申し訳ございません。

映画の方はできあがりつつあり、年明けには完成する予定なのですが、その前に相方と引越しをすることとなり、そちらの作業を慌ただしくしていました。家の中を片付けながら二人で不動産屋へ行き、申し込みの書類を提出してきたのですが、その中に相手との関係を記入する欄がありました。不動産屋には外見上、ヘテロセクシャルのカップルに見えたようなので、その人の言う通り「婚約者」と書きました。

しかし、私はドキュメンタリーでジェンダーを問題にしていることもり、疑われることなく自身が女性と判断されることには、望んでいる反面、ジェンダーの移行過程を抹消されるような気持ちになり、反撥をおぼえます。それは、社会的通念として確立されたジェンダーコードがあるため、移行過程で『気持ち悪い』だとか『男か?女か?』だとか、『やっぱり思った通り』だとか、そのように言われてきた経験を思い出すからです。

その後、住民票を提出したのですが、その住民票には

* 氏名 * 出生の年月日 * 男女の別 * 世帯主との続柄 * 戸籍の表示 * 住民となった年月日

などが記載されています。

私は公的な場(役所や病院や面接など)では常にカミングアウトを迫られることを考えながら生活をしているので、その時は出鼻を挫かれたような気持ちになりました。国内の法律上、今のまま結婚することはできませんし、どちらかというとルームシェアという立場に二人の関係は近いのでしょう。「婚約者」という捉えられ方には、少なくとも違和は感じます。この時は住民票の性別欄に不動産屋は目も通さず、印鑑証明のみでした。これはたまたまでしょう。

社会的通念として確立されたジェンダーコードのため、他のLGBTQIを自認する当事者の場合、一時的だとしても不快な思いをされたことがあると思います。婚姻制度を前提として付き合きあうこと自体が難しく、そのため、友人同士と書かざるを得ない時や、無理にジェンダーを装うこともあると思います。

それは不動産業界の封建的な制度で、ハーフの人や、外国籍をもつ人、収入証明を提出できない人も同様です。制度的なバリアによって、本来すべての人がもっているはずの微細な特徴、身振りや身体、アイデンティティを一元化単純化させる。個体識別のイデオロギーは常に働いているといえます。

ですが、婚姻制度や戸籍制度などを、明日にでも廃止すれば解決するという問題でもありません。私はできるだけ社会の中で、隠され上塗りにされ常識とされ総合化され暗黙の了解とされているコードに疑問を投げかけ、それを多くの人々に問い直す機会を作ることが出来ればと思っています。

Write a comment