香味庵クラブで会いましょう!
Posted by eba_ko | Posted in エッセイ | Posted on 31-08-2011
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ちょうど英語字幕を作っていた7月下旬、山形国際ドキュメンタリー映画祭のアジア千波万波のラインナップから落ちたことを知った私は、もうがっかりして近くの蚕糸の森公園へカモを眺めに行きました。
蚕糸の森公園のカモは水浴びしながら、まったりと水面を泳いでいました。
海外映画祭のデッドラインに追われていた私はその姿に癒され、携帯のカメラでカモをパシャパシャ撮りながら、足を蚊にくわれていたのでした。
忘れもしない8月5日、gmailに一通こんなメールが届きました。
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江畠香希様
始めてメールを差し上げます。
山形国際ドキュメンタリー映画祭「ニュー・ドックス・ジャパン」プログラムのコーディネーターをしております※※※と申します。
日本の新作ドキュメンタリーを紹介する、この特集プログラムの1本として、『女として生きる』を上映させていただきたいと思っております。
応募されたアジア千波万波での上映ではありませんが、いかがでしょうか。
登場する女性たちの物語の数々が、切実でもあり、共感する部分もあり、作品の熱量に惹き込まれました。
ぜひとも紹介させていただきたいと思っています。
日程は10月6日(木)~13日(木)となります。また本プログラムのラインナップの公式発表は、お返事をいただいた上で行います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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一読しただけでは、よく分からなかった内容が次第に飲み込めてきました。
すぐに共同制作者の浦上毅郎に報告し、電話口で泣きながら喜びを分かち合いました。
山形国際ドキュメンタリー映画祭に初めて参加したのは2009年のことです。
新宿から深夜バスにのって、山形に3日間滞在しました。
その3日間で朝から晩まで観た映画は計12本。
アマル・カンワル『稲妻の証言』
リシャール・ブルイエット『包囲:デモクラシーとネオリベラリズムの罠』
スーザン・モーグル『私と運転席の男たち』
マルチン・マレチェク『オート*メート』
ナンナ・フランク・モッラー『共にいよう』
エディ・ホニグマン『忘却』
佐藤零郎『長居青春酔夢歌』
ブレット・ゲイラー『RIP!リミックス宣言』
ジャン=ピエール・デュレ アンドレア・サンタナ『生まれたのだから』
ハルトムート・ビトムスキー『ダスト‐塵‐』
ギー・ドゥボール『分離の批判』
ギー・ドゥボール『スペクタルの社会』
コンペティションで上映されるからには当然、ペドロ・コスタやアピチャッポン・ウィーラセタクンのような目を見張る作品があるのではと、各作品評点しながら映画を観ていました。
中には私にとって首を傾げるような作品もあり、これが本当に選出されたものなの?と疑問をもつこともあります。
それまで私は、映画とは人の批評を読んでから観に行くものだと思っていたので、世界中から集められたドキュメンタリー映画をお腹が減るまで観ていくというのは初めての体験でした。
睡魔に襲われても、退屈なシーンにじっと目を凝らし続ける。
それは、監督の内的体験の歩調に自身の歩幅を合わせていく感覚です。
普段は遠くに住んでいる見ず知らずの人物の視覚イメージが私の中の内的イメージを喚起させ、さらに別のイメージや印象を作り上げていくというのはとてもスリリング。
そういった意味で作品に良し悪しを付けることは、私には難しくなっていきました。
夜になると香味庵クラブと呼ばれる交流スポットで、その日に観た映画をビール片手に皆が話し合います。
監督と観客の立場を気にすることなく話ができる、とても居心地のいい空間で、『生まれたのだから』のジャン=ピエール・デュレ監督からは制作秘話なんかも教えて頂きました。
こんなに楽しい映画祭ならいつか監督として参加したいと、考えていたのが2年前です。
今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭は2011年10月6日〜10月13日に開催され、映画『女として生きる』は10月8日10:00から上映予定です。
当日は挨拶のため会場へ向います。
緊張してガチガチに固まっていると思いますので、会場でお声をかけていただけると嬉しいです!
今年も山形から世界を想像していきたいと思っています。
香味庵クラブで会いましょう!