組長、ニューハーフと偽装結婚容疑 「女性と思ってた」

Posted by eba_ko | Posted in エッセイ | Posted on 21-02-2012

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朝日新聞 組長、ニューハーフと偽装結婚容疑 「女性と思ってた」より転載

女性への性転換手術を受けたフィリピン人のニューハーフの男を妻と偽って婚姻届を出したとして、福岡県警は12日、指定暴力団道仁会系組長の川口勇 容疑者(60)=福岡県那珂川町片縄2丁目=を電磁的公正証書原本不実記録・供用の疑いで逮捕し、発表した。「女性と思っていた」と否認しているという。

発表によると、川口容疑者は2009年2月26日、福岡市博多区の区役所に、川口容疑者を夫、フィリピン人の男(40)を妻とする婚姻届を出し、戸籍にうその記録をさせるなどした疑いがある。妻の名前は偽名を使い、女装した写真を貼った偽造旅券を窓口で示したという。

県警などは昨年3月、別のフィリピン人のニューハーフの男3人を出入国管理法違反(不法入国)の疑いで逮捕。3人が、川口容疑者との婚姻届を出した男の 紹介で入国したと話したことから、川口容疑者が浮上した。暴力団がフィリピン人を組織的に不法就労させていた疑いがあるとみて、川口容疑者ら2人の関与を調べる。不法入国容疑で逮捕された男らの一部は「2人は愛し合っていた」と話しているという。

先日、「女として生きる」を前橋映像際で上映した際も朝日新聞にこうゆう記事が載りました。

「RADIOACTIVISTS」は群馬での上映は初めて。前橋出身の芸術家が身体を使ったパフォーマンスを撮った作品、性転換した男性の記録映画など、 20本近い作品が上映される予定。

「女として生きる」は性転換した男性の記録映画なのだそうです。

分かりやすく噛み砕いて報道しているのかどうか知りませんが、上記の偽装結婚記事も、逮捕されたフィリピン人の友人による証言から、「組長」が「女性への性転換手術を受けたフィリピン人」を「女性と」扱い「愛し合っていた」のは確かで、問題は「暴力団がフィリピン人を組織的に不法就労させていた疑い」を入国管理局がかけたことです。

「ニューハーフの男を妻と偽って」「戸籍にうその記録をさせ」「女装した写真を貼った偽造旅券を窓口で示した」という記事は説明不足の蛇足であって、日本に根深く残っている戸籍制度の問題を浮き彫りにしています。

私も例えばパートナーと家を借りる際は、不動産屋に同棲カップルと運良く見間違えられ、「彼女さんのサインをここにお願いします。」と促されます。逆にパートナーは運悪く「ニューハーフの男を彼女と偽って」とその場にはいない第三者からは見られている。そして、私は書類に間接的な「うその記録をさせ」られたことになり、「女装した写真を」運転免許証か何かで提示したことになるのでしょう。数日後、不動産屋も私たちもハメられたことに気付く。私たちも「不法就労」とは異なった形で、法に触れる可能性がないわけではありません。

これが制度の力です。

江畠香希 監督インタビュー 「すべての人が違う」ということを描きたい

Posted by eba_ko | Posted in エッセイ | Posted on 10-02-2012

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YIDFF 2011 ニュー・ドックス・ジャパン
http://www.yidff.jp/interviews/2011/11i073-2.html より転載

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Q: トランスジェンダーの人を撮ろうと、はじめから決めていたのでしょうか?

EK: はじめは、私自身の話を撮りたかったんですけど、自分にカメラを向けるのは簡単に方向性が決められるし、とても恣意的な感じがしたので、別の企画書を作って撮影を始めました。しかし、まったく違うものが撮れてしまう。最終的に、80時間以上あったテープの中で企画書に合うところをピックアップして作品にしました。それは結果的に、自分を説明しているんじゃないか、とも思います。

Q: セクシャルマイノリティの人の、居場所がないのだという問題を提起しているように感じました。

EK: 居場所もないと思います。男性から女性へ、女性から男性へ移行して行く間の、どっちつかずの状態にいるときに精神的に不安定になって、よりどころを求める。たとえば、それは精神科医のカウンセリングだったり、クィア学会、GID(性同一性障害)学会であったり。そういうところにいかざるをえない。とくに 20代前半でトランスしたいという人は、ショーパブで働いて医療費を稼ぎながら少しずつトランスしていきます。そういう仕事はキャリアにならないし、学業も疎かになる、そして将来も見えなくなる。問題意識はあります。

Q: 監督がこの映画で一番伝えたかったことは何だったでしょうか?

EK: マスメディアに出ているおねえキャラとかニューハーフという人たちは、個性が描かれるというよりは、視聴率のために見せ物としてのおもしろさだけが重要視されて描かれているように見えます。またNHKでも病気なんだなとか、医療の問題として描かれているように感じていて、当事者から見てこのマスメディアでの描かれ方は違うんじゃないかなと思っていました。この映画の中で一番伝えたかったことは、「すべての人が違う」ということです。「女性」の中にも差異はあるし、映画の中の「トランスジェンダー」と呼ばれる人たちも考えていることが違ったりします。それは、小さな差異かもしれないですけど、実はそこには個別性があって。ジェンダーやセクシュアリティなどの二元論に陥らない多様性をこの映画で描こうとしています。見てくれた人ひとりひとりが自分の中で個別性を見いだしてくれたら嬉しいです。

Q: 個別性を認めて、ありのままの自分でいることが難しいような気がするのですが、トランスジェンダーの人も、そうでない人も、どうしたら生きやすくなるのでしょうか。

EK: そうですね、難しい質問です。私の映画を上映すると、質問してくれる人がたくさんいます。そこで手をあげてくれた人が、「私」の物語を、よく話すんですね。私は、こうで、こんな経験をしたんですとか。映画をみて自分の状況を説明したくなったんだろうなと思います。みんなが自分の話をしてくれるという意味で、私の映画がひとつの壁を突破するきっかけになってくれたことが、すごく嬉しいんです。そういう場が無いと相手のことが全然見えてこない、わからないので、そういう場が作られていくことがいいんじゃないかと思っています。

Q: 次回作は、どのような問題をとりあげるのですか?

EK: 不当逮捕の映画を作りたいです。反原発のデモで、身内に逮捕者が出たのですが、その時の状況が本当に暴力にまみれていました。こうした暴力を無くすために、今マスメディアが伝えないことを映画で発信し、マスメディアを動かしていくことが重要で、変える力を映画が持っていると私は信じています。

(採録・構成:久保田智咲)

インタビュアー:久保田智咲、渡邊美樹
写真撮影:白築可衣/ビデオ撮影:白築可衣/2011-09-23 東京にて